物をすり抜ける感覚に染められた指が、すり抜ける筈もない本を撫でる。ここは正しい世界だ。動きが緩慢になる。動きがやがて止まる。息をするたびに不気味に蠢く胸が、肉がはち切れんばかりに詰まっていて、只管に重い。肉体という存在の重さに耐えられなく…
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